織りネームタグの役割・特徴・形態・織り方・折り曲げ加工
「織りネーム」とは、衣料品やバッグなどのメーカー名、会社名、服のサイズなどをデザイン化し、タグ状にしたものです。衣服の襟元、身頃の内側の脇腹あたり、バッグや財布の内側など、いろいろなところに縫い付けられています。文字通り布製で、ブランド名などが織り込まれ、あるいは刺繍で縫い込まれており、厚手でしっかりしています。
織りネームタグの役割
織りネームタグの役割は、いわゆる「下げ札」=「ペーパータグ」と重なるところがあります。すなわち、
- 品質表示、洗濯等取扱方法など、消費者が必要とする情報を伝える
- ブランドイメージ、商品イメージを消費者にアピールする
といった役割です。
織りネームタグの特徴
役割、機能の面では「下げ札・ペーパータグ」と重なるところが大きい織りネームタグですが、形態はまったく異なっています。
まず、下げ札が一般に「紙」と「吊り紐」から成っているのに対し、織りネームタグは布製であり、かつ衣服やバッグに、容易には取れないようにしっかり縫い込まれています。この点で下げ札とは決定的に異なっています。
また、織りネームタグはかなり厚い布でできています。文字や記号、ロゴなどの図柄を織り込んでいるので結果的に厚くなるという面もありますが、「取れにくい、破れにくい」という目的から意図的に厚くしているのです。図柄は織り込まれたり縫い込まれたりしていますので、何度洗濯しても消えることはまずありません。
さわってみると織り込まれている図柄の糸に凹凸を感じられます。生地はなめらかでつやと光沢があり、高級感のあるブランドイメージをアピールするのに向いている風合いになります。
まとめると、
- 厚手の布製で、簡単には破れない
- 製品に縫い込まれており、簡単には取れない
- 文字、記号、ロゴなどは糸で織り込まれており、簡単には消えない
- 光沢、つやがあり、高級感のあるブランドイメージを表現しやすい
といった特徴を持っています。
購入後、ふつうは外してしまう下げ札とは異なり、製品が使われ続ける寿命と同じだけの期間、製品に寄り添いながらユーザーに必要な情報を伝え続ける「持続的なメディア」、それが織りネームタグです。
織りネームタグの織り方・パターン
織りネームタグは、何本ものタテ糸・ヨコ糸を織ることによって生地と図柄を表現します。ここで、経糸(タテ糸)と緯糸(ヨコ糸)をどのように交差させて織るかによって、織りネームタグの雰囲気はおおきく変わってきます。この織り方のパターンについて紹介しましょう。
高密度織り(ハイデンシティ)
タテ糸に対するヨコ糸の本数が多くなっている織り方が高密度織り(high density)です。密度にはグレードがあり、高密度になればなるほど、段階的に細いヨコ糸が使われます。非常に細いヨコ糸は、細かい図柄や文字の表現に向いています。
密度のグレードとタグのサイズにより、単価はおおきく変わってきます。
平織り
もっとも一般的、ベーシックな織り方で、単純にタテ糸とヨコ糸を同じ密度で交差させて織り上げます。織りネームタグの基本形といえるでしょう。シンプルで素朴な質感になり、ほかの織り方では出せないクラシックな感じやビンテージ感の表現に向いています。地よりも濃い色の図柄を織り込む際には、タグの裏側にあらわれる裏糸の影響が大きくなり、これによる味わいも魅力のひとつです。
単価の安さもポイントです。
朱子織り(しゅすおり)
高品位の織り方です。ヨコ糸の浮きが非常に小さく、タテ糸のみが走っているように見える表面となります。厚手で固さのある生地となる一方、地色にサテン調のつややかな光沢があり、レディー向け、フォーマル、スーツ、ドレスなど高級感のある製品に似合います。朱子織りではタテ糸の影響が強く出るため、地色にできる色彩には制限があります。
裏朱子織り(うらしゅすおり)
朱子織りの裏面に図柄を表現する織り方で、朱子織りとは反対にヨコ糸のみが走っているように見える表面となります。そのため、朱子織りよりも地色の選択の幅は広がります。マット感があり厚みがある点は朱子織りと同じですが、光沢は少なくなり細かい線や文字の表現はやや苦手です。
ベタ織り
平織り、朱子織りなどをベースとしつつ、地の部分に別の色の糸を織り込み、色を乗せる織り方です。多色を用いたカラフルな表現に向いています。カジュアル感覚の製品によく似合う仕上がりが期待できるでしょう。タテ糸、ヨコ糸に加えて別の色糸を織り込みますので、そのぶんだけ厚みが出しやすくなります。
綾織り(あやおり)
タテ糸とヨコ糸の交差を1×2や1×3などのパターンで織る手法です。ヨコ糸が一目ごとにズレながら浮き出すことにより、地の組織部分に「綾目(斜紋)」と呼ばれる斜めの模様があらわれる点に特徴があります。このため「斜文織り」と呼ばれることもあります。平織りにくらべると摩擦に弱く強度が低いところがありますが、やわらかく伸縮性にすぐれ、しわになりにくいなどの利点があり、デニムなどの綿織物や、サージなどのウール織物の形で衣服の生地に広く使われています。
織りネームタグの折り曲げ加工
織りネームタグは、織り上がった段階では1枚1枚が連続的につながったテープ状になっています。これを実際に製品に縫い付けるには、熱処理など必要な処理をほどこしたあと、1枚ずつ切り離すことになります(つながったままのロール状で納品される場合もあります)。そして切り離した1枚の織りネームタグを製品に縫い付けるにあたって、タグを折り曲げることが多いのですが、この折り曲げ方にもいくつかのパターンがあります。
EF(両端折り曲げ加工)
織りネームタグの両端を折り曲げる加工です。もっとも基本的な折り曲げ方です。両端の折り返して重なったところが縫い代になります。襟元の内側に縫い付けるタグによく使われます。
CF(二つ折り曲げ加工)・ピスネーム
長さの半分の位置で折りたたみ、両端の重なった部分を縫い代にする折り曲げ加工です。Tシャツの襟元や左脇腹あたりの内側に縫い付けるタグによく見受けられます。
SC/SHC(ストレートカット・ストレートヒートカット)
もっともシンプルな加工で、単純にカットするだけです。化学繊維製のタグはふつうヒートカットします。切り口からほつれないようにするためです。綿など自然素材製のタグの場合は、切り口からほつれやすくなりますので、EF(両端折曲げ加工)の方が適しています。
MHF(マンハッタン折り加工)
タグ全体を二つ折りにする点ではCF(二つ折り曲げ加工)に近いですが、片方の端を浅く折り曲げ、他方の端をさし込んで「ふた」にする形にします。ちょうどバーやスナックでもらえる「ブックマッチ」のような形にして、折り曲げた端を縫い代にして縫い付けます。二つ折りにしたタグを開いたり閉じたりできるパンフレットのようなイメージです。
BC(ブックカバー折り加工)
EFとCFの組み合わせです。すなわち、タグの両端を小さく折り返し(EF・両端折り曲げ加工)、そのうえで半分の位置で二つ折りにします(CF・二つ折り曲げ加工)。両端折り+二つ折りで、結局4枚重ねになったところを縫い代にして縫い付けます。縫い付けの強度が非常に高いので、製品の使用上、動きや摩擦が生じやすい箇所への縫い付けに向いています。
この形式はCF加工のプロセスが手作業になります。そのため二つ折りの精度には若干のばらつきが出ます。
MIF(マイター折り加工)・舟形
タグの両端を90度の角度をつけて上向きに折り返し、吊り下がったループ状の形で縫い付ける加工法です。織り巾が細く、全体的に長いイメージのタグに向いています。ユーザーによってはフックにひっかけるループとして使います。